辻本佳|KeiTsujimoto
渠♯茅野
私は、2021年2月に新作ダンス作品『洞』(THEATRE E9 KYOTO・京都)を上演しました。
新型コロナウィルス感染拡大による緊急事態宣言等の影響を受けましたが、文化庁、京都府、京都市からの補助金の利用、KYOTO BASEd・THEATRE E9 KYOTOの手厚いサポートにより、なんとか公演を成功させることができました。同時に、調査・制作・上演の金銭的負担は、継続的に活動を行っていく上で、もっとも大きな壁と感じる機会にもなりました。
この一年半、私には正誤を判断することが極めて困難であることがわかりました。ただ、考える時間はたくさんあり、お金についてよく考え多様におもいます。自分と社会との関係を考える時間ともなりました。今は、頑張り過ぎずに、息継ぎをしながらこの状況に対応するしかないのだろうなと思っています。
そこで、比較的小規模なオルタナティブスペースを活用し、単発的な公演とは異なる、少人数による中長期的な調査、制作、発表のプロセスを一体化した、WITHコロナにおける作品のあり方を探るため、『渠』シリーズを開始しました。オルタナティブスペースの多くは、使われなくなった建物です。そこにはかつて栄えた産業や文化の痕跡があり、それらは私にとって魅力的なスペースであると同時に、そのスペースが立脚するコミュニティとの結節点でもあります。
本年は、長野県茅野市と京都市、南丹市の3会場で、それぞれの特性を持った作品を、感染対策に配慮した人数の有観客およびオンライン配信(有料)にて発表を行います。オンライン配信による芸術鑑賞スタイルの普及は、賃貸料の廉価な地方の小規模スペースでも、国内外の多くの人に鑑賞される強度を持った作品を発信することが可能であることをしました。このことは、小規模な団体・スペースがコロナ以降にも使えるノウハウやネットワークを得られるチャンスともなり得えると考えています。
予定地である、宮川かんてんぐら(茅野市)は、日本の近代化を支えた養蚕の施設として、後に地域の特産品である寒天の倉庫として使用された建造物である。八木酒造は、国鉄が京都南部に敷かれた際に、流通の拠点となった地域に位置する。これらの背景を踏まえて、制作地域の住民への調査や歴史資料をもとに、複数の分野で活躍するアーティストをスタッフに迎え、写真作品、音響作品、立体作品を制作・展示し、インスタレーションを含めた新たなダンス作品として提示する事を目指します。
『渠』
人は様々な状況に対応し移動してきました。
思考するということは、移動することです。
移動するということは、道を作ることです。
道を作るということは、往来することです。
往来するということは、交配することです。
交配するということは、離反することです。
離反するということは、移動することです。
移動するということは、磨耗することです。
磨耗する自然、磨耗する道、磨耗する建物、磨耗する歴史、磨耗する人
人は、五感と記憶を使って、ある場所を理解しようとします。
私はそれらの肌触りを記憶することから、踊りを始められないかと考えています。
不安定な場所で、不確定なものを作ろうと思います。
覗いてください。
辻本佳
【日時】
2021年10月15日(金)15:30-16:30
2021年10月16日(土)15:30-16:30
2021年10月17日(日)15:30-16:30
各回とも、開場時間は14:30となっております。
【会場】
宮川かんてんぐら
〒391-0013
長野県茅野市宮川4434
(JR茅野駅より徒歩15分)
【出演】
出演・演出・音響・美術|辻本佳
【スタッフ】
演出助手|清水康介
音響制作協力|瀧口翔
美術制作協力|松本成弘
映像配信協力|奥田ケン
広報|辻本彩
宣伝美術・制作|辻本佳
【問い合わせ】
つじもとけい事務所
Email:keitsujimoto.office@gmail.com
主催・企画製作| つじもとけい事務所・辻本佳
助成|文化庁「ARTS for the future!」補助対象事業